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はくはぐのひだったのだ

こんばんは、小鈴です。
生きながらえています。

ハグの日おわってもーた

いちお珀ハグの日



抱きしめたい

続きに畳んでます。
BLかなたぶん。


その人の視線の先には、いつも彼女がいた。
彼女を見つめる彼の視線は時に焼けるように、また別の時には春の日差しのようにと温度を変える。
けれどただ一つ変わらないこと、それは、その視線がずっと彼女の背中に注がれていることだ。
彼女がそれに気付いて振り返り、あの人に微笑みかけることは、ない。
それでも眼差しを送りつづけるその人を止めることが、彼にはできない。
他ならぬ彼自身が、同じ様にその人の背中を見つめつづけているから。
仕事に邁進するその姿勢を、若くして政の中枢の地位を手に入れたその才を、目指すべきものと追いつづけていたつもりだったのに。
気が付けばその背に手を伸ばし振り返らせたいと願っている。

ただ一つ、願が叶うなら、あの人を背中から抱きしめたい。
叶うことが無いからこそ、この思いは永遠。
思いだけならば、可能性も禁忌も関係ない。
背中から見つめるだけなら、寄せられる好意にとりわけ無頓着なあの人に悟られることも無い。

だから彼は今日もひたすらに筆を進める。
あの人が誰かのものにならぬ様に、一番近くをついてゆく。
顔を上げることすらもしてくれないままに、「珀明、頼む」と彼が声をかけたときでさえ、呼吸も乱さずに答える。


けれど、ただ一度背中から抱きしめたい。
永遠の楔が、彼の胸で甘く疼く。


【了】

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