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双七

こんばんは
小鈴@Rosaceaeです。

完全に体調不良。
病院行って来た―。

当分ヤク漬けです。


そんな今日は七夕ですね。
神戸は雨降ってます。

季節モノならと思ってちょっと落書きしてみたのですが
どえらい酷い仕上がりでした。

推敲ってナニ?



昔々の物語。
あるところに、とても優秀で真面目だと評判の青年がおりました。 
青年は宮城に仕える偉いお役人でした。
青年には沢山の部下がおりましたが、役所の中で誰よりも遅くまで残って仕事をしているのはいつも決まって青年でした。
(それは実のところ、とある悪魔の呪いのせいだったのですが、悪魔はそれはそれは凶暴で恐れられていたので、青年も、そしてその他の誰もその事にはふれずにいました。)
そんな様子でしたから、折角の端正な顔立ちにもかかわらず、恋人も居ぬままに何年も過ぎてゆきました。


また、あるところに、働き者の娘がいました。
娘はさる高貴な血筋の正統なる後継ぎでしたが、それに奢ることなく毎日毎日アルバイ……、もとい、仕事に勤しんでは、糸目でちょっとボケボケっとしているけど憎めない父親とお顔は超絶綺麗だけど腹の中には何やら裏があると専らの噂の家人と三人で、慎ましく暮らしておりました。
家事はもちろんのこと、畑仕事や掃除なども進んで引き受けるおかげで、娘の手は日に焼け、頬にもいつも泥が付いていたのですが、父親は面倒がって、また家人はヨコシマなる理由から、それぞれに放置プレイを続けたのでした。


さて、実のところ件の悪魔には一つの趣味がありました。
それは、この働き者の娘と、その父親を観察することです。
さてこの日も封じられている筈の宮城内の室を抜け出して、仕事を青年に押し付けることに成功した悪魔は、いそいそと娘の家やってきました。
娘の父親にきつく結界を張られているために、中に入ることはできません。
ただ、崩れた壁の隙間からそっと垣間見をするだけです。
愛しいものに触れられぬ切なさに、悪魔はそっと涙を拭いました。

嗚呼、それにしても娘のなんと健気な事か。
今日もほんの僅かな小麦粉から魔法のようにして饅頭を作り出すその表情のキリリとしていること。
時折聞こえる、「てい!」とか「きえええええ!!」という掛け声は、きっと饅頭が美味に仕上がる為の仕掛けに違いない。
「そうだ、このかわいい娘に褒美として伴侶を娶せよう。例えば、わ・た・しの様な」

悪魔の血迷った独り言に、何処からともなくツッコミがはいります。
「叔父と姪は倫理上どうかな? というか君には百合姫がいるだろ。」
「あああ、兄上♪」
「黎深、まさか、仕事を残してきたのではないだろうね」
いつもは有るのか無いのかも判別できない様な男の目が、ギロリと妖しく光ります。
「そ、それは。そのぉ。ちょっと息抜きに……」

借りてきた猫の子よりもさらに大人しくなる悪魔に、別の声がさらに追い打ちをかけます。
「しかし、秀麗を他家にとられるのはもったいない。……あのこには李姫になってもらう」
男の後ろから現れたのは、悪魔も良く見知った顔。
しかし悪魔は知っています。
常識人のふりをして、実のところこの男もまた、家の為には手段を選ばないということを。
「玖琅、いつの間に! というかなんだ、兄上の家にお呼ばれなど羨ましい!」
悪魔は愛しい娘を家の為の道具にはさせまいと、必死で叫びました。
けれども、塀の中の男たちは無情にも悪魔に背を向けると、すたすたと邸に向かって歩き始めます。

「絳攸殿は秀麗の婿には文句ない青年だけどね、僕は秀麗の意思を尊重したいからね」
「無理にとは言いませんが、放っておけば絳攸も秀麗も婚期を逃してしまうに違いありません。それならば、多少こちらがお膳立てしてやっても構わんでしょう」
「……あくまで、セッティングするだけだからね。その後の事は本人達の意思を尊重するんだよ」
「兄上、この私が、可愛い甥や姪の意向を無下にするとお思いで?」
「無下にはしないかもしれないけど、玖琅はいるだけで威圧感があるからなぁ」
「……兄上はもう少し威圧感を身につけた方が良いと思いますが」

「兄上に何ということを。玖琅、覚えておけよ~」
悪魔の負け犬の遠吠えだけが、庭に空しく響いたのでした。



さて、悪魔の妨害も空しく、無事に夫婦となった青年と娘は仲良く幸せに暮らしておりました。
それでも諦めきれない悪魔は毎日毎日青年を罠にかけようと試みますが、そのたびに何故が悪事は露見し、ついには裁きの鉄槌を受けることになりました。

【紅黎深の立ち入りを禁ず】

府庫の扉に大きく張り出された言葉の本当の威力を理解したものは、宮城にも多くはありませんでしたが、扉の前に来ては悪魔が泣くものだから、いつの間にかそこは川となってしまいました。
見るに見かねた青年の取成しで、年に一度だけ悪魔が府庫に入れるようになった――かどうかは今となっては知る術はありません。


【おしまい】

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