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宿題 楸瑛さん

こんばんは
小鈴です

お正月のリク
李鈴さま より
お題は 楸瑛受け

当初別の相手を考えていたのですが
なんかいろいろあって
現パロ 龍蓮×楸瑛

龍→楸 的な感じなので
お題に沿っていないと思ったら返品おけいです

楸瑛さん:サラリーマン
龍蓮:何してるのか謎 たぶん大学生

NGなかたもいると思うので一応畳んでおります。
RIVER

デスクの上に二つ並べられたモニターの右下で、
デジタル表示の数字が一斉に十七時を告げた。

オンライン出席ボードに退出と記入して、
楸瑛は立ち上がる。

右手には鞄を、左手にはジャケットを持って、
出口へと向かう。

急いでいると悟られないように、ゆっくりと。

そんな事をしてみたところで、
何時もより五時間も早い退出では、
誤魔化し様も無い事も判ってはいる。

部下達だって、後場からはどこか気もそぞろで、
大引けの後にはこそこそと帰り支度を始めるものもいたけれど、
楸瑛も見て見ぬふりをしていた。

「おつかれさま。みんなも遅くならないようにね」

そう言い残して、足早にエレベータに向かう。

廊下の後ろから、
「課長、決済を……!」と呼ぶ声が聞こえたけれど、
振り返りもせずに「二課でもらって」と返す。

半泣きで縋ってくる部下には悪いけれど、
今日は遅れるわけにはいかないのだ。

楸瑛も、月曜日には朝から二課の課長の嫌味を嫌と言うほど聞かされるのだから、
彼らにも少しぐらい我慢してもらう事にしよう。


吹き抜けのエントランスを通り抜けて外に出れば、
透き通るようなブルーの空。

濃淡のタイルで幾何学模様を描いた歩道からの照り返しは相変わらずだけれど、
ビルの間を抜ける風は、ほんの少しだけ涼やかさを増した気がする。

腕時計は十七時四分を指している。

約束(一方的に通知された場所と時間でさえも、彼らの間においてはそう呼ぶのが適当となっている)の時間まであと一分。

多分、彼はもう待っている。

かつてこの場所に位置していた大学のキャンパスの、
その中でもシンボルであった図書館の前の桜の木は、
サイエンスシティ構想によってこの場所が一旦さら地となった際にも移植をされて、
今もこの街を見守り続けている。

樹齢百余年を超えたその桜が作り出す優しい木陰は、
ミラーガラスに囲まれたオフィス街の中にあって、
サンクンガーデンの滝の飛沫とともに、
慌ただしく行き交う人々をそっと包み込むオアシスとなっていた。

滝をくるりととり囲むように配置された階段状のベンチではなく、
桜の木の下の芝生の上に目的の人物を見つけ、楸瑛は歩み寄る。

声をかけるまでもなく、相手もまた楸瑛に気が付いたことは、
交錯した視線で分かったのだけれど、
それでも楸瑛が傍に寄るまで動こうともしないのはいつもの事である。

けれど、今日はその事が酷く腹立たしかった。

そんな気持ちを笑顔の下に隠して近付いた時、
あるものが目に入ってふと手を伸ばす。

さらさらと風に流れる黒い髪は、楸瑛のものとそっくりだけれど、
ただその長さだけが異なる。

さして手入れをしている風でもないのに
しっとりと美しい彼の髪に絡んだ桜の葉を取ってやりながら、
楸瑛は予感が当たったことを悟った。

「龍蓮、どうして君は大人しく待っていることもできないのかな?」

飲みかけのペットボトルを鞄の中から取り出して渡してやりながら放った言葉が、
思った以上に冷たくて、
楸瑛自身の心もぴりりと痛みを感じる。

いつからか、弟に対して必要以上に尖った言葉が出てくるようになってしまった。

大切な事は何一つ彼には伝わらず、
跳ね返った欠片が楸瑛の心の中を引っ掻くのだ。
何でも解ってしまう天つ才を持ちながら、
なぜ子どものように手をかけさせるのだと苛立ってみるけれど、
すぐに、上手く伝えられないくせに弟相手に責任転嫁する自分の不甲斐無さを感じて、
何とも言えない思いが燻ぶるのを止められずにいた。

もう馴染となりつつある何とも言えない苦いものを感じながら、そっと龍蓮を見る。

受け取ったペットボトルのなかの烏龍茶を静かに嚥下する弟の周りには、
何時もの覇気が感じられない。

(たしか、影月くんにも秀麗ちゃんにも振られちゃったんだった)

大学入試でたまたま(彼らにとっては不運にも)席の並んだ友人たちには、
弟が珍しく心を開いている事は、
楸瑛にとっても喜ばしい事であった。

それまでは何処からともなく現れては、
楸瑛とガールフレンドたちとのアレやコレを邪魔することが習慣だった龍蓮に、
ようやくまともな友人ができたと、心の底から喜んだものである。

けれども、どうやら今日の花火大会はそれぞれに恋人と過ごす事になったようで、
だから今日は開けておけと訳の分からないメールを受け取ったのが昨夜の事。

幸いにして、誰との約束もなく、仕事も立て込んでおらず、
たまたま、龍蓮指定の時間に間に合ったのだ。

もし電話の一本でも入れば、
すぐにでも客先に飛んで行かねばならない身分だし、
部下の抱えている仕事の様子も見てやらないといけない。

この時間に間に合わない可能性の方がずっと高いというのに、
そんな事は考えもしていない様子の龍蓮なのだ。

(どうして、何処かの店とか、せめて日陰で待っておく程度の事が出来ないんだ。
熱中症にでもなったら、花火どころじゃないだろう)

だから、龍蓮が、悪い。

そう思ったけれど、
楸瑛のモノサシでは到底測りきれない彼の行動はいつもの事だし、
こうなることを解りきっていながらメールの一つも返さなかった負い目もある。

そう思い直した楸瑛の言葉は、
丁度烏龍茶を飲み終わった龍蓮の言葉とぶつかった。

「龍蓮、君は――」
「楸あにうえは――」

彼が意図的に会話を遮ることは珍しくもないけれど、
そうではなくてたまさかにというのに楸瑛が驚いているうちに、
弟はふっと笑って、言い直す。

「愚兄のくせに、遅刻をしないとは、いい心がけだ」

人を食ったようなその言葉も、
何処か遠くを見ているようなその視線も、
いつもの弟のものだと、楸瑛は思った。

「あのね、龍蓮。
私はこう見えても、課長でね。
会議とかさ、いろいろあって帰れない時だってあるんだからね。
昨日突然言ってきて、今日定時に帰れるなんて、
いつでもできるなんて軽く考えてもらっちゃ困るんだけど……」

漸く調子が戻った弟に伝えるべき言葉は他にもある様な気もするけれど、
今はただ二人の間を言葉で埋めたい。それなのに。

「だけど」

あっさりと楸瑛の言葉を遮った龍蓮に、
じっと見つめられれば、ビルから吐き出される人々の喧騒も、
アスファルトからの照り返しも何もかもから切り離されて、
龍蓮と二人宇宙に放り出されたような気さえしてくる。

「だけど、楸あにうえは、来た」

ゆっくりと、呼び方も、声音すらもいつもと違う。

彼からは逃げられないと、
きっと本能が知っている。

「ああ、頑張ったから、ね」

乾いた声を、漸く絞り出す。

「頑張った?」

何故?と聞かれていると、解ったから答える。

「だって、君が。君があんなメールくれたから」

楸瑛の答えに、龍蓮はほんの一瞬だけ目を細め、そして呟く。

「だから、愚兄は愚兄だと言うのだ」

龍蓮の言葉と同時に、
音と熱と風とその他いろんなものが一時に戻ってきて、
汗が一滴首から背中へと落ちてゆく。

「え? なんで? 君のために、仕事を切り上げてきたっていうのに?」

訳がわからないと不満を隠さない楸瑛を、龍蓮は黙って見上げる。

「……全く、君は手のかかる弟だよ」

そう言って差し伸べられた楸瑛の手を取って、
漸く龍蓮は立ち上がる。

「早くしないと、花火が始まってしまうよ」

そう言って手を引く楸瑛に、龍蓮は素直に従う。

「全く、遅れたら絶対文句を言うくせに」

思わずこぼれた言葉を、
聞き逃してくれる龍蓮ではなかったと気付いた時には、
もう楸瑛のくちびるはふさがれた後だった。

「だからっっ!! ここ、会社っ!!」

「騒々しいな愚兄。また口をふさいで欲しいのか」

いつの間にか手を引くようにして先を歩く龍蓮の、
振り返ったその顔が懐かしい笑顔だったから、
もう今日は何も言わないでおこうと楸瑛は思った。



【了】




ああああああ、あれコレ
どうなの
ちゃんと掛け算になってる?

一応自分的には
愚兄はまだ自分では気付いていないけど
五男的にはもうロックオンしているような感じなのですが。

おそまつさまでした。

李鈴様お気に召したらお持ち帰りください。
NGなら書きなおします故に。


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